谷川岳 一ノ倉沢 2ルンゼ~Bルンゼ

2004/10/17
坂口・中西  中西 記


ずっと雨と台風続きだった週末もやっとひとごこち。明日は快晴まちがいないっ。金曜日午後8時に新宿駅に集合。高速に入ると車は順調に走り、谷川ロープウェイの駐車場6階のすみっこに場所を確保してビールを飲み始めたんだけど、ルンゼの草付きがどれだけおっかないかという話になり、不安と恐怖にアルコールもそこそこに寝てしまいました。あんなに盛り上がらない宴会もめずらしい。
朝4時起床。早すぎておなかが減ってないのですぐ出発。一ノ倉沢出合に6時頃到着し、前方を見ると白い雪がない一の倉。雪渓が残っていない一の倉。なんて大きくて美しいナメ滝の谷。真っ青な空に冷たい石の壁。ヒョングリの滝って、あのでっかいナメのところをいうのかなあ。「ヒョングリ」って、段になっている滝で、中段の滝の水が吹き出すように上にどーんと飛び出している滝をいうんだって。雪渓がないと、テールリッジもかなりおっかない。先行パーティはガイド山行の人たちでしっかりアンザイレンしてたけど、ちょっとうらやましかった。
久々の快晴なのに、中央稜も南稜も空いてます。南稜テラスから2ルンゼの取り付きへのトラバースの出だしが急で、懸垂しながらのトラバースってむずかしい。そして、比較的乾いているんじゃないかなという状態の2ルンゼの取り付きに8時20分。

1ピッチ目は坂口さん。途中、ぼろぼろのべちょべちょ滝があって、それを巻くためにだいぶ苦労してました。でも、私は隣の4ルンゼを登っている4人パーティの「らく~らく~」ガッコンガッコン「らく~」「逃げろ~」の繰り返しに気が散ってしょうがありませんでした。下でひなたぼっこしていた二人パーティのおじさんたちが逃げ惑ってるし。
2ピッチめは中西。でも、坂口さんが2ピッチ分登っちゃったので、ルート図でいうと3ピッチ目。核心のチョックストーンのところはなんとかクリア。
3ピッチめ、坂口さん。ビレーしてるとすごく寒い。手がかじかむ。
4ピッチめ、中西。ついでに次のピッチも行けるかなあと思ってそのままつっこんだら、ちょっとロープが足りなくて、ヌメヌメの滝の真ん中でクライムダウンするはめに。おっかないのでシュリンゲをいっぱいつないでとろとろと降りて、時間を食ってしまいました。すんません。なんかビレー点多くないか?まあ、いいか。ピンはぼろいけど数はある。
5ピッチめ、坂口さん。後続のおじさんパーティが追いついてきました。
6ピッチめ、中西。でっかい岩と岩の間にシュリンゲでつくったぼろぼろのあぶみが2本かかっています。これを使わないと登れないのかなあと思って足をかけたけど、どうにも動けん。こんなん無視しちゃる。でも、ザックがじゃまくさくて、はいつくばったのでどろどろになっちまったぜ。
7ピッチめ、坂口さん。
8ピッチめ、中西。なんか生ぬるい空気が漂ってきた。わおー、ここがザッテルかあ。お日様がまぶしい。暖かい。いい天気。すぐに後続のおじさんたちもきたけど、運が悪いのねぇ、たった今、お日様は山の向こうにお隠れになってしまいました。

草付きのバンドを少し進むと支点があり、懸垂下降で降りてA~Dルンゼの取り付きに。おじさんたちもBルンゼを行くそうです。とりあえず私たちが先行しましたが、あっという間に抜かれてしまったわい。なんとなく沢登りの達人って感じだわ。
Bルンゼって、2ルンゼよりもおっかないじゃん。ノーザイルだと思うと下を見れない。草がところどころ生えてるだけならともかく、濡れてるのもまだいい、しかし、残雪(つまりプチ雪渓ね)と岩にうっすら張りついた氷はなんやねん。これでAルンゼなんかに行ってたらどうなっていたやら。Bルンゼでよかった。ということにしておこう。けれど、マッターホルン状岩峰がすぐそこに見えてくると、「もしかしたら草付きはないかも」という坂口さんの言葉に元気もりもり。
途中、ちょっと大きめの滝がでてきました。どうみてもかぶってる。ザイルをだして坂口さんがリードしてくれましたが、「おっかね~」。が、このあと、もっとこわいのが待っていたのだった。

暗いルンゼが終わり、岩の間に草がちょぼちょぼ生え、傾斜がゆるやかになってきました。でも、濡れた草とプチ雪渓がすべりそうで気が抜けません。そんなとき、坂口さんの
「え~、あのおやじら、ここいったのかなあ」
たぶん、あのおやじらは、そこをいったのです。ぬるぬるの泥付き。一応階段状の踏み跡があるものの、右側は薄氷でツルツル。左側は枯れた草。上も草。下は、
「ぎゃっ」
すべった。死ぬかと思った。こわかったよー。

とにかく、最後の難所を抜けると、すぐそこに国境稜線がみえる。さっきのおじさんたちが休んでいます。「そっからが核心だよ~」「えっ、うそ~」。うそだった。ちょっとだけ笹の藪こぎをすると、ようやく暖かい登山道に出ました。どうやら、おっかない「ほんとの草付き」はなかったようです。

ネットで2ルンゼの記録を検索したとき、一ノ倉ズンドコ節(谷川小唄)というのを見つけました。去年、南稜テラスでどっかのおじさんが歌ってくれたっけ。そのなかに2ルンゼのことかい?って思わせる歌詞があります。
「嫌な草付き慎重に越せば やっと飛び出す国境稜線
かたい握手に心も霧も 晴れて見えるはオキの耳
トコ ズンドコ ズンドコ」
古き良き時代のテンポだなあ。今ならラップで踊って滑落じゃ。

さて、予定よりだいぶ早く尾根に出られたけど、中央カンテパーティはもう下降してるでしょう。ロープウェイにひよっちゃう?とりあえず午後2時の無線交信までのんびり待ちましょう。
「こちら、くらの坂口です。玉ちゃんどーぞ」
「こちら、玉田です。あと1時間くらいで尾根にでます」
へ?律儀にも「上で会おう」という言葉にしたがったのか、いやいや、下降点が見つからなかっただけらしい。しょうがないので、私たちはのんびり西黒尾根をめざして歩きだしたのでした。

起床4:00→出発5:00→一の倉出合6:00→2ルンゼ取り付き8:20
ザッテル11:30→Bルンゼ入口12:10→尾根13:30→指導センター17:00

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