一ノ倉沢 衝立岩ダイレクトカンテ

2002/10/5
メンバー:山本(裕)・横澤  横澤 記


9月末の屏風岩・雲稜ルートで人工登攀の難しさを痛感した僕は、早速アブミの練習をすることにした。クライマー読本「アルパインクライミング・テクニック(山と渓谷社出版)」を参照すると、「アブミで電柱を登る」というシンプルな訓練方法が紹介されていた。支点を電柱のアンカー(足場)として、立ち込みの練習をするというモノ。なるほど。注意する点は電線を触らないようにすることだが、最大の核心は、不審者と間違われないようにすることかも知れない。
「電柱アブミ・トレーニング」は、会社から帰ってきてから開始するため、当然夜10時を過ぎる。外灯のほのかな明かりに照らされて夜中に電柱を登る姿は、独身寮近隣の皆様に大いなる不安を与えるらしい。トレーニング中は自分の世界に没頭できるので気にならなかったのだが、帰宅途中のサラリーマンにジッーと眺められたことや、自転車で通り過ぎるOLに「きゃっ」と小さく叫び声を上げられるなど、その度に早く上達しなければと焦燥の念に駆られた。
そんなトレーニングのおかげで、A1グレードならばアブミの一番上に立つことにある程度自信がついた。そして練習の成果を試すべく、人工の殿堂「衝立岩・ダイレクトカンテ」へ。掲示板でパートナーを募集すると裕さんが一緒に行ってくれることとなり、金曜日の夜に出発。2時頃出合いに到着し、車内で就寝。

5時00分 起床
5時30分 出発
雪渓が溶けているためヒョングリの滝を巻いていく。懸垂で本谷に下降しながら、はじめてテールリッジがこんなに大きいことを知った。テールリッジは所々しめっており、スベスベで結構怖い。しかし荷物が軽く、快適に進む。
7時00分 中央稜取付着
この日は一ノ倉へ5-6パーティ入山していたが、衝立は貸し切りのようだ。もっとも中央稜は混雑しており、ひっきりなしに「ラーク」のコールがかかる。そんなルートは登りたくない。
準備をしてダイカン取付きを目指しFIXを辿る。アンザイレンテラスより、斜め下にダイカン取り付きが見える。テラスから懸垂で右下に10m程度下り、ちょっと右上するような感じである。
8時00分 登攀開始
1P 横澤 なんてことはない草付のピッチ。カンテ下を目指し凹角を直上。ホールドも豊富。「日本の岩場」で書かれている<手前で切らないように>の注意を意識しすぎたあまり、正規ビレイ点を通り過ぎ、別ルートの支点でピッチを切る。やれやれ。
2P 裕さん 人工登攀開始。ところどころにあるお助けシュリンゲを頼りに進む。トップは頼りないシュリンゲやお辞儀するハーケンをだましだましリード。セカンドでも十分怖いのに、トップはどうやって通過したのだろうか。ピンが遠い所は「松戸の電柱」を思い出しながら最上段へ。時間は計ってなかったが、セカンドなのに、ずいぶんのんびりしてしまった。本ちゃんのセカンドはトップがかけたカラビナやヌンチャクを積極的に使うなど、なりふりかまわずスピードアップだけに注力するほうがよいかもしれない。これが本ちゃん人工で悟ったことだった。
3P 横澤 比較的新しいピンが多く、ペツルのハンガーもあるので精神的にはラクになったが、ピンの間隔もソコソコ遠くなる。思い切って最上段にあがること2、3度ようやくハングを回りこんだ。が、そこでピンが消えた。抜けたのだろうか?フィフィをかけてじっくり観察するも見当たらず。うーん。仕方なくフリーで行くことを決心。ちいさなスタンスで足を踏み変えようとしたが、下足の靴ヒモを踏んでしまい動けない。。。思わず笑いがこみ上げる。人は本当に怖い思いをすると笑うモノらしい。ズリズリと慎重に体重移動し、何とか次のピンへアブミをセット。すっかり腕が張った。
カンテを越えてビレイ点へ。ビレイ点のピンはあまり良くない。いたるところからバックアップをとって、ほとんどハンギングビレイ状態。アブミを完全に両足にはいてぶら下がると腰が落ち着いてラクである(ハーネスの下にアブミを持ってくると足が痛くならないです)。
ビレイしてほどなくザイルにピーンとテンションがかかる。下から「ピンが抜けたー」と裕さん。同じピンにのったはずであったが、、、リードしている時に抜けたらと、ゾッとする。
4P 裕さん フリー交じりの人工? 人工交じりのフリー? とにかく、カンテを回りこんで右上。Ⅳ級とは信じられないが、ホールドは探せばある感じ。人工の後だけにフリーが混じる所はやっぱりいやらしい。
12時20分 登攀終了
スベスベの北稜を下降し、衝立前沢を下る。懸垂1回を交えて本谷へ直接下降した。ヒョングリの滝の残置FIXを辿り出合いへ着いたのは、もう日が陰って肌寒くなっているころだった。
15時30分 出合い着
平均すると1ピッチに1時間以上かかっている計算である。やはり課題はスピードアップ。
改めて出合いから自分の登ったルートを降り返ってみると、衝立岩の端っこを掠めただけではあったが、本ちゃんで人工ルートを登ったことにより、ある程度人工に自信がついた。悪いピンを相手にするにはまだまだ経験が足りないが、人工をしばらくは極めたいと思わせたいいルートだった。
さぁ次はいよいよ赤蜘蛛へ。

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