穂高屏風岩 夏合宿始末記

1997/8/7~10
メンバー:伊平・常世田  伊平 記


東壁ルンゼ

夏合宿、屏風岩に挑戦。8月6日夜、沢度の駐車場で仮眠。8月7日は台風が九州地方に接近していたが大快晴、快調に飛ばして横尾着9時、ベースを張る。
本日中に東壁ルンゼ下部を登りT3でビバーク、翌日上部を登る計画で10時30分横尾を出発する。涸沢への登山道をたどり岩小島跡から川を対岸に渡るが、横尾の小屋の管理人情報では丸木橋があるはずだったが、無い!流れは早く徒渉点を探していると、少し上流で護岸工事をしていたユンボが川の真ん中を下って来て、運転していた男の人が我々を呼ぶ。行ってみると、親切にもユンボのショベルに乗せて対岸に渡してくれた。
1ルンゼの押し出しを詰めるが暑くて大変、T4尾根基部には雪渓のブロックが残っていて水が流れており喉をうるおす。T4尾根基部から腰まで生えた草の中を踏み跡伝いに中央壁の方に下っていくと明瞭な凹角の東壁ルンゼ取付きに出た。丁度この頃、下の登山道を歩いていた涸沢バーティの坂口さんと無線で交信しながら準備をして、13時登攀開始。屏風岩は我々のパーティだけで静なものだ。
1P目、伊平リード。凹角沿いにⅣ程度の簡単なムーブだが、凹角の奥は濡れており、25mでピンが1本しかない。25m地点にビレー点があったが、この凹角は70mとなっているのでもう少し上までと思ってザイルを延ばす。しかし上にはビレー点がなく、50m一杯で残置ハーケン1本にナイフブレードを2本打ち足してビレーする。
2P目常世田リード。15m程フリーで右上して大テラスに出てボルトでビレー。
3P目、伊平リード。ビレー点右上のカンテを右に越して、大スラブをA1で登る。ボルトは浮いているものやリング飛びが多く、ランナーとしては心許ない。最後のボルトから右に3m程、振り子気味にトラバースして三日月レッジでビレー、40m。
4P目、常世田リード。レッジ右上の凹角に連打されたハーケンをA1で登るが、ハーケンはぐらぐらしていて恐る恐る乗る。さすがにボロいので10m程でペツルが打ってあった。この辺から雨がパラパラと来る。フェースに出てボルトを左上し、ペツルのあるレッジでビッチを切る、35m。
5P目伊平リード。左上する泥混じりの小凹角をフリー混じりで抜け、上のフェースをA1で登るとペツルの連打された下降点のあるバンドに出る。バンドを左にトラバースし、簡単な小凹角を登り緩傾斜帯に出てボルト2本と潅木でビレー、35m。緩傾斜帯は草を掻き分けてコンテで150mだが、途中の露岩のスラブが結構いやらしい。T3は半坪ほどの空地しかないのでT4まで登りビバークとする、17時20分。
T4はテント2張り程のテラスで、雲稜ルートの取付きのボルトと潅木にザイルを渡してツエルトを張る。ジフィーズを食べていると雨足が強くなってきたのでカッバを着てツエルトに装備とともに潜り込む。雷も鳴り出したが、夕立だろうと高を括っていたら、台風の影響か?雨は益々激しくなる一方。まるで滝壷にツエルトを張っているような状態で、朝まで身体も装備もずぶ濡れのビバークとなる。明るくなっても雨は止まず7時頃雨足が少し弱まったので、T4尾根を懸垂して退却した次第でした。
岩小屋前の増水した川には、立派な丸木橋が架かっていたのでビックリ。昨日のユンボの親切な親父さんが架けておいてくれたようで、大変助かりました。

東稜

東壁ルンゼを敗退した8月8日は横尾のベースで昼寝、午後から雨が上がったので装備を乾かすが乾かない。小屋の管理人の話では、今年の夏は大天気が不順で7月以降屏風に入って完登したバーティはいないそうだ。横尾の幕場にはクライマーの姿はない。
8月9日朝、雲が低く風も強い。屏風岩上部はガスっているが捲土重来ということで5特出発。1ルンゼ押し出し経由でT4尾根基部が7時。
準備をしてT4尾根に取り付く。1P目常世田リードで被った凹角下のペツルが打ち足してしてあるビレー点まで延ばす。2P目、伊平リードで被った凹核から左側のツルっとした側壁を登り、太い立木のある下降点まで一気にいく。あとは、雑木帯をコンテで登りT4が8時、今も誰もいない。
目的の東稜や東壁ルンゼ上部は、しみ出しで濡れており、悪くなりそうな天候に気が乗らずT4に座り込んで愚図愚図とする。とりあえず東稜を見ようとT2に移動すると。こちら側は乾いている。急にやる気を出して、9時30分取り付く。
1P目、常世田リード。いきなり3mシュリンゲのボロいボルトから。小ハングを越して左上し、中央壁に続く横断バンドでビレー、15m。
2P目伊平リード。カンテ右の垂直のフェースをボルトで直上、最後カンテを左にトラバースしてレッジでビレー、終始あぶみに乗り放しのA1、40m。途中ボロいボルトの横こ1本とトラバース部分に教本のペツルが打ってあるが、ペツルにはランナーを取るだけで、古いボルト沿いに登ったほうが良い。この辺からは屏風岩基部迄一気に岩壁が落ち込んでいて素晴らしい高度感。1ルンゼ押し出しを登って来る9人の団体がいる、今回屏風に入って初めての他パーティである。
3Pめ、常世田リード。カンテ左側の小リッジ状をフリーで登り、スラブを右上の小ハングに向かってあぶみで右上する。小ハング下にビレー点はあるがハンギングビレーなので、ここで切らずにそのままボロいハーケンで小ハングを越え、フェースを左上しペツルの打ち足してある狭いレッジまで延ばす、35m。トボの4P目の中間あたり。
4P目伊平リード。レッジ上のやや被ったフェースから凹角をボロいハーケンとボルトで直上すると、凹角のどん詰まりにペツルがあり左側がテラスとなっている。トポの4P目終了点だがここで切らず、右にトラバースしてトポの5目にあたる簡単な草付きを左上して、ビナクルのある大テラスまで延ばす、35m。
5P目常世他リード。ピナクルの上に登ってフェースに移りA1で直上、潅木帯下でカンテを右に廻り込み、カンテ右側をフリーで登って終了、30m。
なんだかんだと時間を食ってしまい終了は14時30分。すぐに下降に入り4Pの懸垂でT2とT3の間こ着地。T4にデポしてあった靴を取りに行くと、先程見かけた団体がいて、あの有名な遠藤由加や山岳同志会の中垣大作などそうそうたるメンバー。話をすると明日からアメリカンエイドのルートを登るので、T4までフイックスを張り、荷上げをしたとのことで、T4にはブルーシートに包まれたリヤカー2台分位の荷物がデボしてあった。T4からの下降はこのフイックスを使わせてもらった。
8月10日、朝から小雨が振ったり止んだり。全くやる気をなくして、予定より1日早く下山することにした。初めての屏風で天気も悪かったが、東壁ルンゼはなかなか手強く、東稜は高度感のあるスッキリとしたルートで楽しめました。

戻る

 

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks