唐沢岳幕岩・中央カンテ・畠山ルート

1994/9/24
メンバー:木元・平舘・宮城  木元 記


3日間とも雨かもしれないと恐れていたこの3連休だったが、初日は比較的好天に恵まれて予定通り大凹角ルートを登ることができた。そして2日目、今回一番の目標にしていた畠山ルートに取り付く日であったが、5時に目を覚ますと雨が降っていた。それでも30分後にはやんだのですぐに朝食をとり、準備をして取り付きへ向かう。
昨年このルートを登っている立木さんからルートに関する指示を受けて、1ピッチ目をノーザイルで登り出したのが8時。私が腹痛をおこしたりしたため、出発まで随分と時間がかかってしまった。なお、立木さんは湯桧曽川本谷で痛めた足の調子がよくないということで、今回はテントキーパーをお願いした。
草付きをルートファインディングに注意しながら登っていくとバンドが現れ、そこにハーケンが1本打ってある。その隣にさらにナイフブレードを1本打ち足してビレイ点とし、アンザイレンする。事実上の登攀はこの上からで、しばらくは木元リードでザイルをのばす。
最初のピッチは3級程度の凹角から草付きをこえるのだが15m以上登っても途中ボルトが1本あったきりで、非常に気持ちの悪いところだ。やっとの思いでそこを抜けるとやさしいA1の数ポイントの後ピレイ点に着く。
次のハングはA2になっているが、タイレクトカンテの3ピッチ目と同程度の難しさであまり大したことはない。続く流水溝から右上するスラブのピッチも5級となっているが、しっかりしたホールドが多いせいかあっけなく登ってしまう。ここまで、多少小雨は降ったものの次第に岩も乾いてきて、この調子でいけばビバークせずに完登できるのではないかという希望が湧いてきた。
明るい気持ちで次のピッチを登り出す。右上する凹角状スラブからメガネハング下を直上するピッチだが、岩が堅くて最高の気分だ。ところがビレイ点である三寸バンドを過ぎてメガネハングの直下まで進んでしまった。そこにあった残置シュリンゲにつられてしまったためで、そこから三寸バンドまで7~8m懸垂下降するはめになってしまった。
ここからリードを宮城君と交代する。階段状の草付きを左上し、3m程のぬるぬるのスラブをAOで強引に登ってメガネハング上のブッシュ帯まで登る。ここから上を見上げると上部壁が圧倒的にそびえ立っていて、また後ろを向くと高瀬ダムのエメラルドグリーンの貯水が望まれて感じのよい場所だ。そこからさらに1ピッチ、3級のスラブを登って大広間テラス(と思われる)ビレイ点まで進む。
時刻はすでに12時半。これからの行動をどうするか、3人で話し合うことにする。このペースで登っても明るいうちに終了点まで進むのがやっとでそれからの下降は難しい、昨日今日の天候を見ても夜半に雨が降るのは間違いないのでビバークはしたくない、今までのビレイ点をみると全て残置シュリンゲがたくさんかかっていて下降は問題なさそうだ、等の理由により今回は下降するということで意見が一致した。
のんびりと昼食をとり、13時下降開始。各ビレイ点に1~2本シュリンゲを追加しながら順調に下降し、15時取り付きに到着した。この後、約1時間後には雨が降りだし、19時すぎからは雷を伴う豪雨となった。あそこで下降したのは大正解であった。
翌日は朝から下山したために今回の結果は、大凹角とこの畠山ルートの7ピッチ目までということになった。それでもいわゆる「日本のビッグウォール」の一端に触れることができたので充実感は残った。それと同時にいろいろと課題も残った。
やはり大きな岩壁なのでもっと登るスピード(技術、体力、ザイル操作等を含めて)を身につけなければ、1日での完登は厳しいように感じた。また、中間支点のボルト、ハーケン等が一ノ倉に比べると随分少なめなのでそれに絶える気持ちの強さと、残置物を追いかけるのではないルートファインディングの力も重要になってくると思う。そういう事を考えると今回の我々のパーティでは少々実力が不足していたような気もするが、この経験を生かして次には完登できるよう努力したい。

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