大同心 雲稜ルート

1994/12/18
メンバー:中丸・山本  山本 記


この前の冬に大同心の南稜に行った帰り、雲稜の垂壁に(当時はそうみえた)アプミで取り付いている人をみて、すごい事をするもんだなーと思っていたが、いつのまにか中丸さんの熱意に押されて、つづら岩と天狗でのアイゼンのフリーと人工の練習を経て、とうとう正攻法でこのルートに立ち向かうことになった。

今週は冬型が強まり、この冬一番の寒さになった。八ヶ岳は雪が降ったばかりのようで雪の量は少ないが山の木々も何もかも真っ白で、もちろん大同心も白く光っていた。
前日に裏同心でアイスクライミングをした帰りに、大同心の基部を通って、ルートを偵察しておいた。いままでに、ルートのグレードにあわせた練習もしてきたし、装備も使いやすいように整備してきた、いわゆる「準備万端」の状態なのだが、いざルートを見上げてみるとどうも登れる気がしない。帰り際に大同心稜の樹林帯でテントを張っているパーティーがいる。これで明日の一番乗りは無理と決まった。
前日とうって変わって当日は曇天。4時起床5時出発。案の定ルートには既に2パーティーがとりついている。大同心周辺は寒いがあまり風は強くなく、視界は常時50mくらい。

先行パーティーの最後尾を追って8時登攀開始。
1P目は中丸さんリードで、大同心特手有の石混じりの土を凍らせたような壁のフリーがいやらしい。ハングに近づいてピンが増えてくるとホッとする。ハングをA1で越してすぐにビレイ点。
2P目は山本リードで、カッチリした岩の垂壁をA1でトラバースぎみに左上して、そのうえの少し傾斜の寝たスラブを更に人工で直上するが、途中アプミのリストバンドにツァッケを入れて、片足を岩にガリガリやってやっと届くような、ピンの離れているところもある。あがりきった所にビレイ点があるが、もうちょっと行けば大テラスがあるということなので、先行パーティーが行くのを待って、さらにピッチをのばす。
ビレイ点右のリッジを人工とフリーで巻き気味に登るが、やはりものの本に書いてあるとおりテラス直下の垂壁からの立ち込みが厳しく、垂壁に打たれたボルトの細ぴきにツナッケを一本入れて、死ぬおもいで立ち上がる。
大テラスは幅60センチタタミ一畳分くらいで、全然大きくない。
3P目は左の雪のついた階段状を壁を回り込むように入り、目の前のピナクルをめざし少し傾斜の強い壁をフリーで直上する。ピナクルの脇にビレイ点がある。
4P目は3級のフリーだと思っていたら、すぐに人工連続の凹角で、これもピンが遠かったりする。雲稜ルートの人工ピンはリングボルトのリングの変形したのや、ボルトの頭に細引きをタイオフしたようなのもあるが、浅打ちのボルトやグラグラのハーケンはほとんど無く、中丸さんによれば結構しっかりしているルートらしい。
最終ピッチはドーム取り付きに向かうほとんど水平のトラバースで、足下はまるで道のように帯状にスタンスがあるが、しゃがんで歩くしかないほど上部に岩が出っばている。このころから非常に強い風が吹き始める。登攀終了15時半。
当初、ドームも登るつもりだったが、両者とも気力を使い果たし、時間切れでもあるし、またの機会にということにする。見上げるドームは垂壁であるのに真っ白く氷におおわれてしいて、先行も取り付いた様子がない。
帰路は南稜を懸垂で降りる予定でピンをさがしたが、大同心ルンゼは雪におおわれてなにも見つからず、結局、終了点のルンゼ側にある二本のリングポルトで降りる。
1ピッチおりてほぼ真下に南稜を登ったとき懸垂したピンが見つかり、そこから50mで南稜の取り付きに着く。(17時)

雪を巻き上げる強風の中から脱出して、大同心稜で一息つく。どうも二人ともやっと生きて帰ってきたという感じ。5ピッチあったうち、気を抜いて楽しめたところは一つもなく、どのピッチでもーヶ所は「もうだめだ」と感じるところがあった。
うちらの技術ではまだこのグレードはちょっと早かったんだねということで同意する。

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