幽の沢 左方ルンゼ

1992/7/26
メンバー:木元・鈴木直  鈴木直 記


日曜の朝5時、一の倉沢を登る他の嵓メンバーに先立ち、幽の沢目指して出会いを出発する。
わずか15分で。到着し、早速、幽の沢を詰める。展望台への道を右に分け、左に曲がったところで、鈴木が足を滑らせ流水溝のような沢を”急流滑り”さながら数メートル滑って行った。これは冷たかった。
滝を超えてカールボーデンを右側から巻いて進むが、ここは草付も混じり、快適とはいえない。T1尾根への取付きに着いて準備を始めるが、ここで鈴木がザイルを車に忘れてきたことが発覚し、あぜんとする。思わずうなってしまったが、シングルで行くことを決める。
ザイルは流れるか? もしものとき撤退は不可能だ‥いろいろ頭をよぎるが、落ちなければ問題はないと自分に言い聞かせる。全くもって大ボケである。
T1尾根は、6:30出発。ルートはスラブを取らず、右から行く。3ピッチでT1テラス。難しくはないが、ピンが少なく気持ちよくない。
左方ルンゼに入り、まず、本元が2級のトラバース、続いて鈴木が3級のスラブ。天気がよいだけあっで、ルートは乾いている模様。
次が核心の4級A1。木元が行く。右の草がぽうぽうに生えた岩溝状のところを登るが、ピンは結構生えている。技術的には難しく、A1こそなかったが、AOを余技なくされる。当初、左フェースを計画していたところ、日差しをまともに受ける中央壁を登るのはしんどかろうということで、日陰が予想されるルンゼに変えたのであるが、狙いは的中し、この核心を越えるまで日陰で涼しい思いをした。
その後、難しいところはなく、順調に進む。ガイドブックには最後が100mとあるか、150mくらいはありそうだ。コルに着くと、一の倉尾根方面の視界が開け、緑豊かな稜線がすばらしい。一の倉の壁を登りきったときにはとても味わえないのどかな雰囲気である。
30分程かけて稜線まで出て、後は、中芝新道を下る。芝倉沢に降りるところで、一カ所、左にトラバースすることろを行きすぎてしまい、少々迷う。
芝倉沢の水はうまかった。ただ、結構雪渓が残っており、対岸に渡るところは緊張した。出会いに帰ったのが13:00。
既に川崎氏の車がなく(実は移動しただけ〉、あまりに冷たいな・‥と思いながら帰り支度をしていると、川崎氏がげっそりした顔をして降りてきた (一瞬だれかと思ってしまった)。「事故だ、事故。!」という声に一瞬何のことかもわからないまま、出会いを挑める。
そのとき、既に山本は車に乗せられており、出血の激しかった様子が伺えたが、意識はしっかりしており、驚きと安堵の入り交じった複雑な気持ちになった。木元が月夜野病院までつきそい、残り嵓メンバーは救助を手伝ってくれた人たちへの対応に追われている。
特にパートナーであった下野は深刻そうな表情だ。鈴木は特に手伝えることもなく、ジュースを買って手伝ってくれた残っている人たちに配った。
落ち着いたところで、月夜野病院に見舞いに行く。山本の親御さんが到着するまで全員残っていても仕方あるまいと、秦氏、川崎氏、遠藤女史、下野こ残っていただき19:30、鈴木が平舘女史、木元と先に事で帰途に着く。
2ルンゼの1ピッチ目をノーザイルで行き、浮いた岩を抱いた山本が10m程落ちてしまったとのことであるが、ちょうど3週間前に鈴木ら4名が2ルンゼに行ったときも、今回と同じく1ピッチ目はノーザイルであった(その時点では取り付きはまだ雪渓に隠れていた)。確かにいやなところではあった。
我々は、いそぐ余り簡単なところではザイルを着けずに行くとこも多い。だが、少しの不安でも感じるのであれば、面倒がらずにハーケンを打ちながら登る。、この基本を思い出すべきであろう。

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