1992/2/8~10
メンバー:桜井・鈴木(直) 鈴木(直) 記
2/8(土)
昨年の大凹角ルートに引続き、今年も桜井氏の誘いで唐沢岳幕岩を目指す。S字ルートも検討するが、当然ビバークになるであろうことを思えば中央バンドを縦断している山嶺第2ルートの方が安心だ。
夜行の臨時アルプスで睡眠を取り、信濃大町からタクシーで七倉へ。
長いトンネルを含めて車道を1時間歩き、ダム下で沢筋を左に入る。7:10。今年もやはりトレースはなく、ラッセルになる。ワカンを着けるが、雪の量は昨年ほどではないようだ。途中、広島ルートのパーティ3人に抜かれる。
10:30頃に大町の宿到着。ここにベースを張り、翌日に備えてザイルをフイックスすべく空身で取り付く。11:30。取り付き点にピンはないが、ブッシュの中の凹角状を目指して桜井氏がトップで進む。途中もプロテクションはブッシュかフレンズを利用するしかなく、ルートが正しいという保証はない。
次のピッチはわかりずらい。鈴木が狭いバンドを左にトラバースし、桜井氏を迎えて一緒になってルートを捜しまわる。やっと、直上するボルトラダーを発見し、鈴木がリードで登り始めるまでに1時間弱も要してしまった。
少しかぷった壁をA1で進むが、途中の緩いスラブ帯に抜ける手前で行きずまり、降りて桜井氏にバトンタッチする。桜井氏は雪の中からボルトを捜し出し上へ抜けた。
夕暮れも追っているため早速下降に入る。2ピッチにそれぞれザイルをフイックス。ベースに戻ったのは19:00。メシとサケを胃袋に入れて寝る。大町の宿は快適だ。
2/9(日)
さて、7:00発で、昨日のコースを登り返す。1ピッチ目はゴボウ、2ピッチ目はユマーリングで行くが、鈴木はザイルが凍っているせいかプルージックの結び目がどうしても動かす、1時間ほどてこずる。進むに進めず腕はバンプし、あまりにもなさけない気分になる。が、桜井氏にユマール1個借りてなんとか登れた(その分桜井氏には苦労をかけました)。
10:00過ぎに、下に立木・尾原・本郷の大凹角パーティが1日遅れで到着したのが見えた。
3ピッチ目は、鈴木が汚名挽回をかけ(るつもりで)、ユマーリングの失敗でパンプした腕をだましだまし登る。あぷみを使用しての数メートルのトラバースから直上のA1となる。最後、緩傾斜帯に出るところで手がかりがなく、ボルトを打つが、非常に岩が硬くて20分かかる(桜井氏はその30cm上にボルトを発見! )。その上はスラブを覆った氷が数メートル続きアイスクライミングになる。ブッシュにでたところでピッチを切る。セカンドはユマールで、荷物は滑車を使用して荷上げ。
その次は、10mのブッシュm級の登りであるが、ブッシュの状態が想像以上にいやらしく時間がかかってしまつた(ブッシュをかきわけかきわけ泳ぐようなもんである)。
続く、箱型ハングを桜井氏リード。ずっと人工であるが、まずは十数メートルの垂壁、途中で傾斜が落ちたスラブになる。スラブ帯には雪がべったりとついているので、あぷみの最上段に立って、雪かきしながらの登はんになる。最後は、右のブッシュュ帯に逃げてビレイ。
鈴木がフォローした時点で、日没。岩が混じる雪稜を3ピッチ延ばし、中央バンドの上部にたどり着き、ビバーク。傾斜は結構あるが、整地してなんとかツエルトに納まる。時すでに21:00なり。日本酒が500mlあったが、眠いほうが先にたち、なかなかなくならなかった。
2/10(日)
いよいよ核心の上部岩壁かと思うと、いやでも気合いが入る。7:30、ボルト2本のビレイ点から、鈴木リードでブッシュ混じりの脆い凹角を登って行く。が、20数メートル延ばしてもピンは2ケ所のみで、フレンズが頼り。ほとんど登られている様子はなく、その上を偵察した桜井氏が上にルートが見あたらないと降りてくる。ルートでないようだ。
残念ながら、今日中に頂上まで抜けるためには、山嶺第2の上部はあきらめるしかない。懸垂下降する。
中央バンドに降り立ち、ルートを捜してみるが、やはりわからなかった(山嶺第1に取り次いだパーティもルートがわからなかった模様)。
ここより、立木氏らが順番待ちをしている大凹角ルートを横切って、下降に用いる右稜ドーム壁を登ることにする。上を見上げれば”人工おじさん”?こと尾源氏がザイルを延ばしている。
桜井氏リード。人工ルートで、雪はなく、空身のため快適だ。
そのまま右稜を懸垂下降で降り、16:30、大町の宿着。ツエルトをかぶってしばらく待つと、大凹角を登り終えた立木氏らが暗い中降りてきた。
今まで晴れ間が見えていた空にも雲が覆い、風も強まってきている。
下山中のラッセルや雪崩はごめんなので、今日中に降りれるところまで降りることにする。夜間ではあるが思ったより早くダム下までたどり着く。ここからの凍った車道がやたら単調で長い。22:00、やっと葛温泉に到着し、タクシーで信濃大町へ。夜行のアルプスで帰途につく。
天候は安定していて強風は吹かず、また、さほど気温も低くない等、幕岩は冬壁として最高のフィールドであるが、まだまだ自分が力不足であることを補綴する。桜井氏には今年もおんぶにだっこになってしまった。