谷川岳一ノ倉沢・A字ハング

1992/8/30
メンバー:松野・木元  木元 記


8月29日(土)21時に新秋津駅で松野さんと合流し、一ノ倉へ向かう。私は遠藤さんと幽ノ沢の予定、松野さんは尾原さんとA字ハングを登る予定だったが、急に尾原さんが来れなくなったのでどうしょうかと言っている。
出合に着くと秦さん、平舘さん、根布さんがいた。明日は変形チムニーを登る予定だということだった。少し離れた所で寝ていた遠藤さんを起こして話を聞くと、その日は、幽ノ沢のV字状岩壁左ルートを登ったという。しかし、幽ノ沢はアブローチと下降路が長くなるので、明日は予定を変更して一ノ倉にしませんかと持ちかけられた。
そこで話し合った結果、奏さん、平舘さん、遠藤さん、根布さんの4人が2パーティーに分かれて変形チムニーに、松野さんと私とで別のルートへ、ということで話がまとまった。
さらにその別ルートはどこにしようかという話になった。いくつか候補は考えられたが、松野さんは、「今回はA字を登るつもりでいたのでどうしてもA字を登りたい」と言う。私の実力ではA字は難しいように思えたが、そこまで言われると断ることができず、「行きましょう」と答えた。その夜は酒をひかえて早目に寝ることにした。
翌朝4時に起床。真っ暗でよくわからないが、天気はあまり良くないようだ。食事もそこそこにあわただしく準備を済ませ、5時に出合を出発する。
ヒョングリの滝を高巻く頃には空もずい分明るくなってきた。雲は多いが、雨が降りそうな感じではない。
中央稜基部でギア類を身に着け、6時50分にA字の取り付きに向けてトラバースを始める。松野さんは、A字は2回目なのですぐに取り付きがわかったが、見た感じではルートとは思えないような所だ。太目の木をビレイポイントとし、松野さんのリードで登り始める。
1ピッチ目は垂直の潅木帯を強引に登り、ややかぶったフェースを人工でこえて傾斜のゆるいスラブをフリーで登る。このスラブが濡れていてとてもいやらしかった。
2 ピッチ目は木元リードでフリーでスラブを右上する。IV+だがホールドが細かくて難しいところだ。右のハーケン連打のラインを目指して必死で登っていくが、このラインは上の方で雲一のルートと重なっていた。どつやら右に寄り過ぎてしまたようだが、戻るのも大変なのでそのまま登って第一ハング下で左へ進み、本庄ルートのビレイ点でピッチを切った。
3ピッチ目・松野さんのリードで3m程左へトラバースしてから直上する。初め一気にA字ハングをこえてしまう予定だったが、先行パーティーがなかなか進まないので、ハング下のビレイ点で一旦ピッチを切った。先行が上へ抜けたことを確認して、改めて松野さんのリードで4ピッチ目を登る。難しそうなハングに見えたが、松野さんは一発で見事にこえていった。私の方は下のアブミの回収に手間どったり、変なところにフィフィを引っかけたりしてかなり時間を食ってしまった。
小休止の後、木元リードで5ピッチ目を登る。ほとんどA1のピッチだが浮き石をかかえたり、ピン抜けで落ちたり(下のアブミをつかみ、すぐ止まった)して意外と苦労をした。
石楠花テラスで松野さんを迎え、5m程右に移動して大休止とする。そこからは雲一のルートがすぐそばに見え、あまりの近さに驚いた。
6ピッチ目は、正規ルートとなる右の凹角ではなく、直上する本庄ルートを松野さんのリードで登る。このピッチは単純なA1から最後はⅣ+程度のフリーとなるのだが、岩がしっかりしていてルート中最も快適なピッチだった。
7ピッチ目・木元リードでL字ハングを登る。ここは2段になっているためなかなか疲れるが、ピンは近く、難しくはない。ハングよりもその上のフリーの方がいやらしく感じた。
ここで草付のバンドに出て、実質上の登攀は終了となる。8ピッチ目は松野さんがリードして草付の中の踏跡を登っていく。このピッチの中程で、雲一上部の踏跡と合流した。
9ピッチ目は木元リードでブッシュの中の露岩を登り、衝立の頭に出た。そこで松野さんを迎えて登攀終了、がっちりと握手をする。取り付きが7時で終了が15時、待ち時間が30分近くあったので、実質7時間30分程度の登攀で、内容もとも充実していた。
夏合宿の屏風岩での敗退で少し落ち込んでいただけに、今回A字を完登できたのはとても嬉しい。また、松野さんと一緒に登ったことでクライミングに対する姿勢、技術など、いろいろ教えてもらうことができて本当に良かったと思う。

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