滝沢下部ダイレクト~第3スラブ~ドーム

1992/8/29
メンバー:本郷,・鈴木(直)・立木  立木 記


4:20:出発 13:15:コル 15:50:ドーム

日頃、烏帽子、衝立ばかり登っている我々にとってその対岸にひときわ白く、一気に稜線までそびえ立つ滝沢スラブは.どうしても登りたいと思わずにはいられない。また冬に滝沢スラブを登っている私にとって夏に登らなければ、未完の壁なのである。今回のオーダーは、本郷・,直樹・そして私の3人。3人であるということで多少スピードが遅くなるだろうが、そこは気心の知れた仲、問題はないだろう。
出合にて酒もほどほどに3時50分起床、暗やみの中ヘッドランプをたよりに一の倉へと入る。ヒョングリの滝で先行パーティにおいつく。どちらへとたずねると、第3スラブだという。だが我々に先をゆずってくれた。途中休むことなく南稜テラスまで行く。本谷バンドより本谷右端(下り)にそって下ることわずか、滝沢下部ダイレクトの取付点へ着く。
1P目の階段状の壁はザイルを使わず、2P目よりアンザイレン、登攀開始とする。
6:45登攀開始立木、トップで登り出す。フリーでカンテを回りこんでから直上、凹角に打たれたピトンに導かれて人工で登って行く。上部をハングにおさえられたところより、右へ3mほどアブミトラバース、小ハングの下で切る。ルート図ではこの上まで登って切っているようであるが我々の45mローブでは届かなかった。ビレイピンはきいていないが分散してアブミビレイとなる。
続けて立木リード。頭上の小ハングを越え、ハングとスラブとの接点を人工で右上して行く。フリー化されているが、ぬるぬるで悪い。やがて、滝の落口にてピッチを切る。烏帽子、衝立がよく見える。そして、変形チムニーを登っているパーティとこのあと同じスピードで登って行くのでいつも同じ高度にいた。
Y字河原から上第一バンドまでは一応スタカットにしたがコンテでも問題はない。もっとも残置ピンもないが、ただしーケ所F1はぬれていて、岩ももろいのでザイルは必ず使った方がよいだろう。F1からF2までは本郷トップとなる。
F2~F4までは直樹リード。ザイルのつけかえによるタイムロスを考えて、3ピッチ位ずつ、つづけてリードする。F2の鎌形ハングは左端にピレイ点がある。ルート図によっては右から回り込んでと書かれているものもあるが、ローブスケールを考えた場合直上してスラブと左のリッヂのコンタクトラインを登ったほうがよいだろう。
F3はスラブからF4末端の垂壁をAOをまじえて登るとビレイ点につく。F4は左をハング帯におさえられ、やや右上しながら3mほどの垂壁をAOかA1でぬける。確か冬は右へ回りこみながらダブルアックスで滝をのりこした思い出がある。
続くF5下まで直樹がリードしてピッチをきる。F5~F6上部第2スラブとの境界リッジまでは立木トップとなる。F5は左のスラブか右のリッヂにそって2通りルートがある。ぬれているので迷わず石のリッヂにそって登る。
リッヂの途中でローブが足りず切る。今回45mザイル2本で登ったがランニングビレイのとりかた、また登るルートによって,かなりザイルが足りなくなってしまう。
続くピッチF5上で切る。F6は左のハングにそって右上しながら出口のかぶりぎみの壁の少し右をのっこす。ここをのっこすとやっと上部スラブ帯が見える。
ここから右上しながら3~4ピッチで右のリッヂのコルに上る。PM1:15着小休止のあとドームまでの草付を登って行く。途中垂壁なども時々出てくる。スリップすれば第2スラブへ向かって一直線に落下してしまうので、そんなところは迷わずザイルを出した。ドーム基部PM3:40着。ここへ来たのは3回目だ。今では冬によくこんなところへ来たものだと我ながら感心してしまう。一目でわかる横須賀ルートに取り付く。
1P目立木リード。思いおこせば3年前の9月どしゃぶりの雨の中2ノ沢右壁にとりつき撤退することもできず、雨にうたれて滝沢リッジでビバークとなりドーム壁。この上のテラスで下からふってくる雨にじっとたえながらフォローする私をビレイする桜井氏のことを思い出した。
冬にはこの下のピッチで30mランナウトした桜井氏が墜落したことがある。そうこのドーム壁には一生私にとって忘れることのできない思い出があるのだ。
さて1P目途中より人工となる。難かしくはないが、抜けたピンを打つこともなくシュリンゲをやたらと残置している為余計に登りにくい。このピッチ、直樹と本郷が立木さん我々はフリーで行きますのでお額いしますよ。と言う声に、気合も入り、ちょっと待て、グローブをはめるからと言ってから二人を向かえる。
しかし途中で姿は見えないがカランカロンと音がしている。アレおかしいなと思っていると直樹がひょっこり顔を出して、やっぱりルート図どおり登らないとまずいと思って4級A1できましたと言う。何故かそんなパートナーを見てほほえんでしまう。 2P目1mほど上に登って左へトラバース~凹角を登りしっかりしたホールドの5級のフリー岩がしっかりしているので5級には感じない。3P目凹角~草付、Aルンゼの終了点のコルへとつく。
ドーム終了点までは10時間半かかった。
一の倉出合着8:30。今思えば決してむずかしいという印象はないが長いルートである。天候判断とスピード、それらが適かくにこなせなければ登れないルートだと思う。昨今の衝立ブームもよいがアルパインをめざすのであればぬるぬるの壁、垂直のぬれた草付の処理そういったものもテクニックのうちであると思う。
けっして難かし〈はないが、いろんな要素が含まれている壁。それが第3スラブだろう。

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