前穂東壁右岩稜前面フェース 古川ルート

1991/9/24
メンバー:鈴木(直)、立木  立木 記


今回この9月の3連休は各自色々な計画があったと思う。しかし毎週必ずといって良いほど計画的にやってくる台風に気も沈みがちとなり、なかなか本気になって自分の計画を心の中で暖め考える気になれない。そんな事で今回も又駄目だろう位の軽い気持ちで取敢えず行くことにする。直樹も私も、今週は飲み会が続いていささかバテ気味なので一人が寝て一人が運転する事にして行く。坂巻温泉の駐車場にて仮眠後、沢渡まで戻ってタクシーに乗る事にする。
新村橋を渡り梓川の対岸へと渡り、一昨年の北尾根の際、取り付いた慶応尾根を見送り、パノラマ新道へと進む。奥又白出合いを正面の尾根より取付き、急な樹林帯を行くが非常にきつい。やがて又白ノ池に着く。すでにテントが2張りあるが目の前にそぴえる北尾根と池のおかれた雰囲気の良さにしばし見とれてしまう程だ。
すぐに池より上部へ登って取付点までのアプローチを偵察しておく。夕暮れまでの間、少ないウイスキーをチビチビやりながらあまりの美しい風景に心もうっとり。
翌朝、疲れのせいか少し怠いが早く起きる。昨日偵察した池の真上の尾根を登り、途中より水平にトラバースしてC沢へと向かう。雪渓も小さく簡単にC沢へと入る。
ザイルを使う所も無く、インゼル上部へ着く。ここで私は左の踏跡を辿って行くが、どうもすんなりとB沢へ降りる事が出来ず、残置懸垂ピンを使ってB沢へと降りる。(翌日判った事だがC沢をどんづまりまでつめて左へ水平にトラバースすれば自然とB沢へ入れる)ぼろぼろのB沢を詰めると真上にアリンコハングが見える所より取付。
1P目、直樹リード、4~5m直上からバンドを左ヘトラバースする。
2P目、立木リード、このピッチは右上する凹角が何本かあり、どれも残置ピトンは豊富そうでピッチグレードも変わらないだろう。  3P目、直樹リード、また凹角を右上する。2、3ピッチ目はまったく簡単である。
4P目、立木リード、この当りから傾斜も強く頭上にハング帯が現れ緊張してくる。しかしまだ余裕でリードできる。クラックの中にホールドを探して登って行く。
5P目、このルートの核心部だ。直樹リード、凹角からハング5+だ。一般的に今はフリーで登られているとの事だが、我々はアブミを使ってしまった。実際ハングまで行くと高感度もあってフリーで行こうなどという気はまったくおきなかった。ハングを越すとぐっと傾斜は落ちる。
そのままザイルを引きずって北壁大テラスに着く。このテラスからはDフェースが本当によく見える。ちょうどDフェーススラブ帯の真正面で大かた都立大ルートや田山ルートの位置も判った。軽くパンを食べてさっさと北壁へ取り付く。2ピッチほど3級が続くと第2テラスに着く。傾斜が無いのでグングンザイルがのびる。
Aフェース基部は広いバンドになっていて右~左へ思うように歩ける。ルート図でいう所の3+の凹角がよく判らず適度に楽しめそうな所に取り付く事にする。
1P目、立木リード、フェース~傾斜のあるクラック、ワンポイント4級、クラックを抜けレッジヘ上がる。残置ピトンが一本しかないのでフレンズ2ケを使ってビレイを取る。2P目、直樹リード、右ヘトラバース~直上スラブ、そのまま休まず立木がザイルを引いて行くと、前穂のピークであった。久し振りに来た前穂だ。直樹を迎えて完登の握手を交わす。
ピークからは又白の池が良く見える。ピークにいる人たちの 「何処から来たんですか」いう言葉に、池の方を指差して「あの黄色いテントからです」と、なあーんてカッコよすぎるかな!!。食事をしながら天気も良いのでしばらく。トカゲをする。
下降路は明神への踏跡を辿り、しばらく行くと3本槍のコルより左側へ小さな尾根を2つピョンピョンと超えるようにしてA沢へと入る。ガラガラで少しいやらしいが特別問題はない。
下り切るあたりで右の尾根のコル(踏替点)へ向けてトラバース、あとはルンゼを下り一直線で池へ辿り着く。完登を祝して思いっきり乾杯といきたい所であるが残りが少ないので今晩の分に取っておこう。暮れ行く奥又白を眺めながらこんな素晴らしい別天地に居る自分に何故か戸惑いつつもきっと又来ようと思った。

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