コップ正面壁雲表ルート

1991/9/8
メンバー:立木・本郷  本郷 記


コップと言えば、日本で初めてボルトが使用された岩として有名である。私自身いつか登ってみたい岩として、常に頭の中にあった。
今回の9月会山行でその機会を得ることができた。パートナーは、昨年5月の「変形チムニー」以来、ザイルを組むのは、お久しぶりの立木氏である。心強いパートナーを得て、やる気満々で、一の倉へ向かうが、車の中から見上ける雲にだんだん気持ちもなえてくる。
一の倉へ到着したら、やはり雨、こうなったら酒、酒、酒…。それしかないでしょう。結局2時半位まで飲み、とりあえず寝る。
5時に目が覚め、天気の方はというと一応雨はあがったようだ。急いで準備をして、他のルートを登るパーティーより一足先に出合を出発。
出合より見上げるコップは、かなり上に見え、コップスラブは、えらく立って見える。衝立前沢を登り出すがその長いこと。衝立前沢は、今まで3回降りたことがあるが、いつも短く感じていたのに、登るのは本当に長い。いいかげん嫌気がさしてくる頃、略奪点に到着。もうテールリッジより、かなり上である。
いよいよコップスラブを登り出すが、前夜よりの雨で、部分的に悪い所も出て来て、コンテに切り換える。取り付きに到着8時半。
コップ広場は、思ったより広く快適な所であった。一ノ倉にも、こんなに明るい場所があったのかと以外でもあった。雲表ルートは、コップ広場の右側から、大ハングの弱点をつき、凹角を登っていくルートである。
1ピッチ目、本郷リード。(4+)
逆層のフェースを登り、安定したテラスまでの15mの短いピッチ。頭上のハングから滝が落ちていて、その1ケ所だけアブミを使わせていただく。
2ピッチ目、立木氏リード。(4、A2)
かぶった凹角を登って行く。ピンはすべて不安定で、ボロボロ、新しいものは、1つもない。下向きのものはあるわ、抜けかかっているものはあるわで得意の「たのむよー」コールのオンパレードであった。
やはり、今どきコップなどに登りに来る人はいないのだろう。凹角の抜け口に、松本瀧雄氏の打った初登時のボルトがあった。形は、まるで「かまぼこ」のようで、今だにしっかり効いているようだ。カール下テラスに到着。
3ピッチ目、本郷リード。(4)
凹角を直上していくが、ほとんど沢登り。凹角の抜け口が、特に悪く、行きづまってしまう。しょうがないのでアブミを使用させていただくが、(持っているとつい使いたくなってしまう。)最上段に乗っても抜けることができない。そこで、リストループに足を入れるが、抜け口がかぶっていて恐ろしい。しかも、プロテクションが悪いので落ちたら止まらないと思うとふんぎりがつかない。
しかし、クライムダウンもできないので、左手の比較的よいホールド(濡れていて、外傾しているが)を信じて、胸のあたりから強引にマントリングで抜ける。フォローの立木氏も、フレンズにアブミをかけて、抜けてきたと言う。いやはや、たいへんな4級であった。
この後、草付きを4ピッチ登るが、濡れているので、とても気が抜けない。特に、砕石のルンゼに入ってからチムニーには、閉口した。いったい、どこが2級のピッチなんだと怒りたくなってきた。終了点は、見憶えのある懸垂岩のコルである。(終了12時半)
ここは、「変形チムニー」の終了点でもあり、立木氏とは、表と裏の両方から登ったことになる。
予定より時間がかかってしまったので、すぐに下降を始める。南稜、最後の懸垂で桜井さんのパーティーと合流する。南稜テラスで、松元さんに完登記念写真を撮ってもらう。
今回登った雲表ルートは、短いが内容のある好ルートである。衝立もそうだが、ピトン主体なので、ムープも複雑である。(A2は、ないと思うが)
嵓の皆きんも、ぜひ登ってみて下さい。けっこう充実感もありますよ。

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