大同心正面壁雲稜ルート

1991/1/19
メンバー:桜井・立木・尾原  立木 記


かねてより課題であった大同心に我々3名は取り付く事にした。ルートは雲稜、正面壁の初登ルートだ。13時のあずさに乗り赤岳鉱泉に着いたのはたしか20時位だったと思う。
今回はテントを持ってきていないので寝るまでの間、鉱泉の中で酒を呑むことにする。早々に切り上げ鉱泉前の林の中を簡単に整地してツェルトをかぶって寝る。まったく寒くない。空は満天の星空、明日の晴天は約束されているのだ。
4時起床。5時出発。大同心稜をつめ、まだ暗いので明るくなるまで雪の斜面を掘り下げ風下側へ座って時間をつぶす。我々が一番手のようだ。ルートはガイドブックに出ているとおり基部を左下ヘトラバースすると、残置シェリンゲがゆれているのですぐわか
る。
さて、取付き点でピッチの分担を決めたいのだがお互い遠慮もあって何も言わない。桜井氏が尾原さん行きますかと声をかけると、あのうるさい尾原さんが返事をしない。あれ?(その理由はあとでわかるのだ〉それじゃ、俺行きましょうか、と言う事で私が1、2ピッチをトップで行く事になる。今回3人なのでセカンド以下はフイックスロープをユマーリングすることにしている。
まず1P目10m程直上(フリー残置ピンナシ)してから左上しながら小ハングを越えると小テラスがありそこで一旦きる。
2P目、人工で左上して小ハングをこえる。ハングをこえると小さなホールドのスラブになる。頭上5mにボルトが見えるがその間プロテクションがとれなくて中々ふんぎりがつかない。一歩上がっては下り、そんな自分が情けなくて、エイ行っちまえと勢いで登る。この上のレッジで一旦切るつもりであったがこの上の少しかぶりぎみの壁をリッペを右に回りこむ様に越えて見たがこの上にはビレーポイントを得られそうもないので下にクライムダウンする。そこで後続の桜井、尾原氏を迎える。
3P目からは桜井氏がトップをつとめる。ここで尾原氏が「実はドームのピッチを私にトップをやらせてくれませんか。そうしたら他のピッチはリードしなくてもいいからお願いしますよ」と言う。我々2名は一瞬自分にとって損か得か沈黙、でもまあいいかと言う事で尾原氏にゆずることにする。
3P目トップがビレイポイントに着き我々はユマーリングで登るが初めてで勝手が分からずユマールにつけるシュリンゲの長さもわからず体重をかけるとザイルが伸びるので腕力ばかりを使ってしまい、その上、ザイルにつけていたアブミが体重を岩にうつした時、ザイルが縮むので岩角に引っかかってしまい回収不可能となり散々な思いをして回収した。これでもう腕はパンプして使いものにならなくなってしまった。
続く4P目は4級フリーだ。ここは岩がしっかりしている。しかし傾斜がありヨーロッパの岩場のような雰囲気がある。
さて5P目今回このピッチが一番辛かった。4級AO頭上の凹角を3ポイントのAOで桜井氏がぬける。私もAOを試みる、と最後の右へのトラバースでなんと体にかけたシュリンゲがボルトに引っかかってしまって身動きできなくなり、死ぬ思いでアブミを出す。そこでまた抜けようとすると引っかかる、都合3回も同じボルトに引っかかってしまった。
おまけに前日会社の健康診断でその時飲んだバリュームのせいで1P目から腹の具合が良くない。死ぬ思いでドームの肩につきすぐキジ打ちに行く。
さてドーム1時間位待っただろうか。待ちに待った尾原氏のリード、なんなくぬける。続く我々桜井氏なんなくユマーリングして行く。私全くダメ。もう登る気力がまるでなしテンションでおろして貰う。自分でも情けなくなってしまう。こんな結果で帰りの足取りも重く、帰りの酒もちっともうまくない。さかんに尾原氏がなぐさめてくれる。本当に岳友とはありがたいものだなあー

戻る

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks