一ノ倉沢烏帽子沢奥壁変形チムニールート

1990/9/1
メンバー:秦・長谷川・川崎  川崎 記


[出合6時、取付き8時、烏帽子岩基部16:30、南稜テラス18時、帰着21:30]

出合に着いたとたんに通り雨があったが、当日は終日薄曇りの好天気だった。
ひさしぶりに登攀がしたくなって一ノ倉を目指した。オジさんだけでとやや悲壮に構えていたら、9月会山行でこのルートを計画していた長谷川が加わり三人で向かう。トップは14ピッチを三分し秦、長谷川、川崎の順。今回の目標は「ビバークなしの速やかな登攀。できれば南稜最終ピッチも含める」こととした。
1、2ピッチは難なく通過。しかしルート案内『谷川岳の岩場』では1ピッチ目の20mが35mと記載されており、混乱した。これまでにも思い当たることはあったが、ドサクサにまぎれ、今回長谷川に指摘されるまで気にしなかった。それにしても極端な水増しではないか。
3ピッチ目は左のハング越えのルートをとり、4ピッチ目とあわせ右に大きくトラバース。また来ることがあったら中央の4プラを越えてみよう。
チムニーのピッチ、「濡れてる、上の方で広がっている」と声が聞こえ、やや時間をかけて長谷川がリード。続いて秦が息を荒くして通過。ラストが速やかに抜けようとしたがいざ取り付くと往生した。ともかくバック・アンド・フットで出口下まで行ったが、体の向きを替え外側に面し乗り越すという動作が、左足が確実に立たないため覚束ない。こりゃダメかなと考え始めたとき、ままよと右側の岩の出っ張りを両手でひいて体を上げ、やっと上がれた。実戦でこんなに考え込んだのも珍しい。
続くピッチは右上トラバースでルートファインディングに迷う。
狭い正面ルンゼを登る。中央カンテ・ルートと合流した後のルート図上2ピッチを長谷川は一気に攀じる。長谷川がA0でぐいっと越した3mの垂壁を川崎はA0であと一息で上がれず、何とザイルを掴んでしまった。秦はアブミを使用。
ゴボウでは後味が悪い。食事をとりつつ次のピッチ、4のA0の凹角を見上げ、ドライだしゲレンデ感覚で攀じれぬこともなかろうと長谷川にトップを譲ってもらった。見切ったはずの凹角だったが、出だしがかぶり気味で不安定だった。残置シュリンゲはなく、あてにしていた右手の岩のホールドがぐらつき気持が萎えて一度目は敗退。二度目はもはや心中背水の陣。普段は使わないヌンチャクを使用し、ぎりぎりに乗っ越した。リードの機会を持てたのでこのルートに思い出が残るだろう。
下方の南稜テラスで男がひとり寝そべってわれわれを眺めている。秦はアブミで、ラストの長谷川はフリーで上がってきた。
その後は烏帽子岩の基部まで容易な2ピッチを川崎、凹角の4級から上部を長谷川のトップで登攀終了。濡れていたら危なげな岩の基部を回り込み、下降に移る場で4ルンゼ方面の奥深い景観を眺めゆっくりと一服したかったが、このおだやかな光を後どれほど浴びておれるわけでもない。登攀自体の時間、また新ザイルの絡みもあって予定時間は既に大幅に超過している。踏み跡を南稜終了点まで懸垂を交えて下り、6ルンゼを懸垂でテラス下部まで下ったところでヘッドランプを点灯。中央稜基部で休憩し、暗闇の中を出合まで2時間かけて下った。あたたかい陽気で、途中、ビバークの誘惑に駆られないでもなかった。
下の沢で汗だくの体を洗い、ご苦労さんのビールの乾杯。しかし、水場に冷えているはずの長谷川のビールが消えていたのは一体誰のしわざか。
もっぱら長谷川の能力を思い知る一本だった。しかし経験者の秦のガイドも心強かった。自分への注文は実に多い。登攀については、必要十分な思い切りを保証するだけの特に手指と腕の持久力が不足していた。改善の余地はあると思いたい。
ルート自体は変化に富み、落石も予想に反し少なく面白いと思った。これを2、3人で、明るいうちに出合まで下りてこれるだけのスピードでやれることを自分の当面の目標にしようと考えた。ともあれ天侯に恵まれ、時間はかかったが期待通りの一日でした。
<別記>
一時話題となった勝野さんと出あった。同性のパートナーを得て念願?のクライマーになり、張り切っているように見えた。その会に水が合ったようであるから結構なことなのだろうが、当方はどうも居心地の悪さを感じていた。ま、そのことはこれ以上触れてもしかたない。何らかの理由で退会したとしても、出あった時は久濁を叙し近況を語るくらいの人情はもっていたいものである。
記・川崎て下り、6ルンゼを懸垂でテラス下部まで下ったところでヘッドランプを点灯。中央稜基部で休憩し、暗闇の中を出合まで2時間かけて下った。あたたかい陽気で、途中、ビバークの誘惑に駆られないでもなかった。
下の沢で汗だくの体を洗い、ご苦労さんのビールの乾杯。しかし、水場に冷えているはずの長谷川のビールが消えていたのは一体誰のしわざか。
もっぱら長谷川の能力を思い知る一本だった。しかし経験者の秦のガイドも心強かった。自分への注文は実に多い。登攀については、必要十分な思い切りを保証するだけの特に手指と腕の持久力が不足していた。改善の余地はあると思いたい。
ルート自体は変化に富み、落石も予想に反し少なく面白いと思った。これを2、3人で、明るいうちに出合まで下りてこれるだけのスピードでやれることを自分の当面の目標にしようと考えた。ともあれ天侯に恵まれ、時間はかかったが期待通りの一日でした。

<別記>
一時話題となった勝野さんと出あった。同性のパートナーを得て念願?のクライマーになり、張り切っているように見えた。その会に水が合ったようであるから結構なことなのだろうが、当方はどうも居心地の悪さを感じていた。ま、そのことはこれ以上触れてもしかたない。何らかの理由で退会したとしても、出あった時は久濶を叙し近況を語るくらいの人情はもっていたいものである。

戻る

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks