鹿島槍天狗尾根

1989/3/28~31
メンバー:中川・養田 中川 記


3/28 信濃大町 雨~雪

早朝タクシーに乗り大谷原へと向う。鹿島養魚場の少し先より歩き始め、AM7時に大谷原に着く。久しぶりの雪道なので嬉しい。大谷原の橋を渡ると右へ曲がり大川沢に入る河原を右へ向うと営林署小屋に出る。
ここからは、左岸を夏道どおりに歩き、昭電取入口の吊り橋を渡って右岸側を10分も歩くとアラ沢
出合。AM8時30大体止して朝食をとる。9時、必要のない雨傘をデポして出発する。今年は雪が少なくアラ沢の右岸から左岸へは渡渉となる。200m(?)近くアラ沢に入った地点から天狗尾根の支尾根に取り付く。急で雪が少なく土の見えている部分もあるため、かえって登りにくい。
10時50分急登にあえぎながら1600m付近までくると、風も雪もつよくなってきた。視界も悪い。雪量も増え、トレースはなく、ラッセルが続く。スノーリッジになっているところもあり、少々緊張する。午後3時1900m地点に雪洞を掘る。1時間半程で2人分の空間を作り、荷物を整理してくつろぐ。
明日の好天を願って、酒を飲み、早めにシュラフにもぐり込む。

3/29

午前3時、養田さんに起こされる。頭が痛く、腹の調子も悪い。ゆっくり支度して、5時半出発。風が強く-10度と寒い。山頂はガスで見えず、東の空には、いやな雲が浮かんでいる。予報では午後よりくずれるとのこと。
気分も重く、雪の状態も悪い。30分程ラッセルして、簡単に今日の北壁アタックを中止する。
雪洞で休んだ後、荷物をまとめ、天狗の鼻まてベースを前進させることにする。養田さんを先頭にして8時に雪洞を出発。第一クーロワールには30分程で着くが、雪の状態が悪く、通過に苦労してしまう。
第一クーロワールを抜けたところで休み、先頭を交代する。第ニクーロワールまでは、やせた、スノーリッジが続き、山をくずしながらのラッセルとなる。第ニクーロワールは、急な雪壁で左の樹木ぞいに登ると傾斜も弱く、ビレイ点も取れる。中間の広いテラスに着く頃から強風となり雪も降り始める。
ここから養田さん先頭で天狗の鼻を目指すが、強風のため時々、ピッケルにしがみつかねばならず、前に進めない。ようやく天狗の鼻に着き、さっそく雪洞の適地を探す。幸運にも、雪洞跡を見つけ、急いで入口を掘り出し、中に逃げ込む。外の強風が嘘のように静かで暖かい。中は広く5~6人は十分に入れる。入口の雪をきれいにして、荷物を整理して、くつろぐ。今12時。4時間もかかってしまった。
残り少ない酒を大事に飲みながら、明日の打ち合せをする。どうも明後日から天気がくずれそうな事。意外と雪の状態が悪い事。正面ルンゼは早くても8-10時間はかかるロングルー卜である事。何よりも2人共体調が良くない事を理由に北壁は諦め、このまま、天狗尾根を登り詰めることにした。
今夜はカレーライスを食べ、明日の用意をして、9時にシュラフにもぐる。

3/30

3時に起床、5時に雪洞を出る。午前中に頂まで往復する予定なので荷物は軽い。
外は、あいかわらず強い風で天気も良いので寒さも増している。雪洞の入口をとじる時に手袋を濡らしてしまい手が冷たく、痛い。替えの手袋にして進むが天狗のコルの手前で我慢出来なくなり休む。親切にも養田さんが手袋を貸してくれた上にホッカイロまでくれたので、なんとか回復する。
ますます風は強くなり、コル手前のスノーリッジは、四つんばいで進む。吹き飛ばされたら終わりだと思うとゾッとする。北壁は絶えず表層雪崩が起こり、中央ルンゼは雪煙で白い。今の実力で取り付いていたなら事故は免れなかっただろう。気弱が幸いしたようだ。
雪壁とスノーリッジをいくつか登ると、3m程の岩となる。簡単に越すが上部に支点がないため下りは困難であろう。8時に荒沢の頭に着き、風にさらされて休みヨーグルトを飲む。ここからは東尾根と合流し、なだらかな雪稜が頭まで続いている。気分の良い雪稜を歩き8時45分に北峰の頂につく。記念撮影の後、風が強いのですぐに下山する。
問題の岩場は、雪面にピッケルをさし、スタカットで通過する。この頃から風もなくなり、快適な下山を続け11時30分天狗の鼻に帰り着く。天気は良く、北壁の眺めも最高なので、のんびりと昼寝でもしたいところだが、明日からの天気が気になるため早々に荷物をまとめて下山することにする。
第二クーロワールを懸垂していると下から4人パーティが登ってきた。今回、間近に見る初めての登山者だ。(東尾根上に3人パーティがいて、コールしあった。)
くさった雪稜から第一クーロワール、雪稜と下り、明日の雪洞(1900m地点)にたどり着く。

3/31

4時に起床。6時発。どんよりと曇り、頂はガスにかくれている。
急いで下り、荒沢の出会に7時15分、大谷原9時、鹿島部落には9時50分についた。鹿島館で早過ぎる昼食を食べていると、外は雨になった。昨日会った4人パーティが少し心配になる。

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