1988/3/13
中川・桜井
12日 夜10時30分、一ノ倉沢出合着。強風のため、避難小屋付近の樹林の中にテントを設営。
13日 3時起床、5時出発。中央稜取付点着、6時30分。
雪の付着していない岩壁部分は乾いていたものの岩溝や草付は氷化しており、アイゼン、手袋での登攀はやはり難しかった。
特に2ピッチ目のルンゼ途中から右側のリッジに出て、フェイスからチムニーを登る核心部は厳しかった。このピッチは桜井がトップに立ちアブミを使って突破。ラストの中川は「トップがアブミを使用したとは思わず、フリーで登ったため2回もテンションをかけてしまった」とのこと。
衝立の頭着12時。小休止の後、下降に移る。アプザイレンで楽に降りられると思ったのも束の間、ザイルが濡れているせいなのか、各ピッチごとにザイルの回収が出来なくなった。やむなく登り直して回収することになり「ユマールがあればと何度も思った」という。途中でシュリンゲに直接ザイルを通すことをやめカラビナを利用することにした。このため、カラビナを2枚残置してきた。
おかげで下降にも同じく時間がかかり中央稜取付点に降り立ったのは4時過ぎであった。下山は雪が安定していたのでテールリッジは通らず烏帽子スラブを下った。
(例年になく天気が良く、雪の状態も安定していたという好条件のもととはいえ、会創立5周年の節目を迎えるときに、積雪期の一ノ倉沢の岩場に足跡を残すことが出来たことは、まったく喜ばしいことと思う。
中川、桜井の両名は今夏ヨーロッパアルプスのバリエーションルートの登攀を目指しており、今回の中央稜のように積極的な登攀を実践したことは立派である。
今回の登攀結果が推進力となって、翌週の滝沢リッジの完登へとつながったものと考える。
※ 滝沢リッジの記録は次回の集会だよりにのせる予定。